あれは夢？

何年も前の話です、私の家からクルマで１５分位の所に京浜運河という川があります。
川といってもほとんど海と言っていいほど潮の干満の影響があるので、条件さえ揃えば昼間でもフッコクラスなら釣ることが出来ます。
その日の満潮は朝の４時でした、潮止まりから引き潮の時間に行くことで「釣れる」という確信がありました。
前日、大森のルアーショップで情報を入手していたからです。
タックルはフェンウィックのベイトロッド、アブのアンバサダー2500Cに１０ポンドテストライン、ルアーは実績のあるボーマーのレッドヘッドです。

私の家は品川駅からすぐなので国道１５号線を平和島方面に走り、立会川の交差点を左折、大井競馬場を右に見ながら直進すると京浜運河に架かっている橋です。
ポイントに着いてルアーロッドのガイドにラインを通しながら水面を見ていると時間通り潮が左に動き始めます、引き潮です。
ベイトキャスティングリールの遠心ブレーキの調整をして・・・・・。
まず１投目、ラインの巻き癖のせいなのか、思ったほど飛距離が出ません。
２投目、確かこの辺に何か沈み根があったはずだとボトムを意識しながらリーリング。
３投目、キャストしてからプラグが早く潜るようにロッドティップを煽りながらリーリング、時たまちょんちょんとアクションを与えながらゆっくりと巻いてきます。
次の瞬間「ガツン」というアタリがあり、ラインが右に走ります。
「あっ」不意をつかれた私はロッドを２回ほど煽ってフッキングさせました。
「ウソだろ、３投目で来るかよ」とつぶやきながら今頃になってドラグの調整をします。
ロッドを立ててしばらく耐えていると今度は左に走りながら１度ジャンプしました。
「でかい！」
ポンピングでよせて来ると５０�pを越える「スズキ」クラスのシーバスでした。

釣り上げたシーバスをリリースすると、そそくさとタックルを片づけて帰りました。
そのときの心境は今でも理解できないのですが、時間にして２０分足らずの出来事でした。
家に帰ると時計の針は５時を指そうとしているところです。
カミさんはまだ寝ていたので、私も床に入って寝てしまいました。

自然に目が醒めると普通の休日の朝でした。
朝食を食べながら、カミさんが「あれ、今日釣りに行くって言ってなかった？」と言います。
私は「あ、今日はやめとく・・」と答えました。
「せっかく昨日用意していたのに・・・。」
「でもよかった、・・じゃあ今日は買い物につき合ってくれる？」とカミさん
「いいよ」と私
クルマの荷室にはルアーロッドとタックルボックスの入ったバッグが積んだままでした。

今でも時々あのシーバスは夢の中で釣ったのだろうかと思うことがあります